風の吹くままに。 〜短編時代小説〜
拾い物は。
「どうしたのですか?怜様。」
先頭を歩く、自分達の主がふと足を止めた。
不思議に思い歩み寄り尋ねて見たところ…
「ん?何かね、人が倒れてるんだよ。」
思いもよらぬ返答に困る、
余りにも楽しそうに呟く姿に思わず背中が震えた。
「何故そのように笑っていられるのですか…」
まぁ、いつもの事だと思い軽く溜め息をつく。
しかしその目線の先に目を向けた途端、
思わず言葉を失ってしまった。
「ね?面白いでしょ。」
まだ口元に薄ら笑みを浮かべている。
「何ですか…これは…」
今にも震えてしまいそうな手足にぐっと力を込めた。
「怜様、先を急ぎましょう。こんなのに構ってるお時間は貴方には無いんです。」
「…逆らうの?」
ちらりとそれを横目で見て、また視線を戻した。
すると怜様はにっこり笑いながら、
脅迫染みた言葉を呟いた。
「…死にそうな人間を置いていくの?酷い人間なんだね、君は。」
そう言われて言葉に詰まった。
「…っしかし!!」
カチャリと音が聞こえた、
次の瞬間には首元に短刀が添えられていた。
「…死にたい?」
「…っ」
ぐっと息を呑んだ。
もう反論さえも許されないだろう。
「…もう一度言ってあげる、君は死にたいの?」
そんな雰囲気に呑まれて、
諦めて口を閉じた。