time



「わー蒼衣不良」
「棒読み」


クスクス笑う蒼衣につられるように笑顔になる。楽しいな、って思う。友達がいなくとも私には十分だ。蒼衣がいればいい。本人にはとてもじゃないけど言えないが、いつかこの気持ちが伝えられる日が来ればいいのになんてお気楽な考えを持っていた。

ほてる顔も、
蒼衣が笑うと嬉しくなる気持ちも、
触られた場所から熱を生むこの感覚も、

きっと恋愛感情だと思うから。いつか、伝えられるならば伝えたい。


「しょうがない、サボりに付き合ってあげる」
「やった!」


びゅうと吹く風に髪をとられ優雅に宙を舞う。それを手で押さえると蒼衣が骨張った綺麗な手を延ばしてきた。髪フェチなのだろうか、また嬉しそうに触り細く長い指に絡める。その手つきがなんだか色っぽくて見ていられず照れ隠しに俯いた。


「好きだなー、千明の髪」


“好き”という言葉に反応しかけた身体に叱咤し黙って俯く。されるがままにしておくのが一番だと思ったのだ。今何か言葉を発したら零れてしまいそうな想い。



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