優魂者
ばちんと音がした。
無類が片手で振り下ろした木刀を少女が裏拳で殴って弾いたのだ。
「…シッ」
そして弾いた腕を引くと同時に片方の腕を突きだし、無類の胸部を殴りぬかんと振るう。
「…チッ」
その拳を咄嗟に引き寄せた刀の柄で受け止め防ぐ。
そのまま刀を持つ腕を払って拳を弾き、そのままの反動で蹴りを放つ。
「っと」
少女はその蹴りを後方に下がって紙一重で避け、そのまま踏み込み、一気に捻りを加えた突きを無類の脇腹目掛けて放つ。
「…ッ」
咄嗟。刹那の間に拳と脇腹の間に木刀を滑り込ませて直撃を避けるが、衝撃で後方約2メートル程吹っ飛ばされる。
「無類君、大丈夫!」
吹っ飛ばされた様子を見ていた薫が心配になってか声をかける。
「ああ、大丈夫だ」
直ぐに体制を立て直し、少女を直視する。
一見刀対拳では刀の方が有利に見えるが、ちゃんとした対処が出来ればリーチ、一撃必殺性が刀にあるものの十分対等に戦える。
少女はその対処が上手く、さらに上手く懐に潜り込み相手の急所を的確に殴る少女は、今まで自分より格上で尚且つ素手の相手と実戦経験が少ない無類にとってはかなり苦手な相手となっているだろう。