優魂者
「今のを受けて立てるか…それに今の一撃、私が魂読を使っていなかったらかなり堪えていただろう」
構えを解き、長い髪をバサリと靡かせる。
「…何言ってるんだ手前…もうやる気はないのか?」
「ああ、もうない。実力は計れた。武蓮は上手く育てたな」
「…なッ」
普通出るはずのない言葉に驚き、構えを自然に解いてしまう。驚いているのは無類だけではない、同伴者も驚いていた。
「…無類君のお父さんの名前?」
少女は無類の名前だけでなく、無類の父親の名前も知っていた。
「…けどまぁ、優魂者についての何やらは教えてはいないようだな…」
「優魂者?なんだそりゃ?薫知ってるか?」
「さぁ?聞いたこともないよ」
聞かない単語に双方首を傾げ。
「…まあ、あの武蓮のことだ、あえて教えなかったのだろうが…私が一から説明…出来るかな…」
少女は不安そうに顔をしかめ
「とりあえず、中に入って話そう。絶対に長くなるからな」
そう言って勝手に新山家の敷地に入り、玄関を開けて上がっていく。
「……………」
無類と薫は、暫く見つめ合った後、諦めたように溜息をついて新山家に入った。