優魂者
女性は既に生き絶えていた。月光に照らされた黒い外套が、血の着いた自身の愛刀の腹を舐めていた。
よく見ればその刀、所々刃零れを起こし、あまつさえ錆び付いてさえもいる。どんな素人が見てもなまくら刀と分かる。しかしそんな刀で人間二人を真っ二つに切り裂いた、通常普通の日本刀であっても人間一人を真っ二つに切り裂くことは不可能。それをあのなまくら刀で切り裂いたとは、異常である。
それもそのはず、彼は精神的に異常な意味を含めて通常ではない。彼は優魂者である。
『どんなモノでも切り裂きたい』
その願望が彼にはあった。なんでも切り裂けたら、きっと楽しい殺人ももっと楽しくなるだろう。
腕脚首腹胸腰頭顔。
何処でも切り裂けたなら、きっと楽しいだろうな…と、彼はそう願っていた。そしてその願いは自身の魂を改変し、彼をなんでも切り裂ける超能力者とし、同時に人を切り裂くことを楽しみとした快楽殺人犯とした。