優魂者
とりあえず逃げよう、武器も無い今の状態では勝負に成らない、せめて鉄パイプでもなければ切り合う事も出来ない。
そんな事を考えながらじりじりと後ろに向き逃げようとした瞬間、直感で伏せろと感じ伏せた。
するとどうだろうか、約20メートル先に居た筈の通り魔が俺の直ぐ前で長刀を振るった状態で止まっていた。
速い、いや速過ぎる。全く解らなかった、まるで最初からそこに居たかのように。
そして次の瞬間横に跳べと直感が来た。その直感通りに横に跳んだら案の定剣を――
――いや、剣が既に地面に切り込みを入れて居た。振り下ろしたモーションが見えない、いや無い。そして見た限り
『始まりから終までの過程がすっ飛ばされている』
そして、あの錆だらけ刃零れだらけの剣がアスファルトをバターの様に叩き斬っている様子から察するに
『すっ飛ばされた過程にある物は切断される』
多分そうだろう。あの瞬間移動もコイツの能力の産物だろう。
全く、とんだ化け物が通り魔してくれたもんだよ。
無類が厭味を言いながらアスファルトに切り込んだ長刀を抜きながらこっちを向いて来た。
そしてまたその切断を起こして来た。