優魂者
「ふるぅぁ!」
無類は雄叫びを上げながら鉄パイプを振るう。首、腋、脇腹、腕関節、脚関節、金的、鳩尾、額、脳天、眉間。ありとあらゆる急所、弱い所を有りったけの力を込めて振り打ち、刺突放った。だが
「……ははは…」
全く効いていない。通常筋骨隆々の大男でも殺せるくらいの力と勢い、手数を加えたつもりだが全く黒い外套に効いていないし、あまつさえ鉄パイプが曲がった。硬すぎる。人間の強度じゃない。まるで鋼の塊を撲っているような錯覚を覚えるほどだ。
「反則だろッ!」
瞬間またあの瞬間発生する切断の帯が走った。間一髪直感が危機を告げ、しゃがみ避けれた。そのまま後に飛びのき逃れる、が。
ガシャン、ガガガ
音がした、真上だ。よく見るとあの組み上げられた鉄骨の塔の上に黒い外套が立っていた。有り得ない、たった今目の前にいた外套があんな所に瞬間移動した。ただそれだけならまだよかった、移動しただけだから。しかしそれだけじゃない、いつの間に斬ったか知らないが、切断された鉄骨が大量に落ちて来た、さっきの音はソレだった。