優魂者
「……くきけけけけ」
鉄骨の降り注いだ中心。無類の居た位置を見て黒い外套は笑った。心底愉しそうに。
ガタンと、鉄骨が動いた。下から何かが押し上げたのだ、そこに居たのは紛れも無い新山無類。黒い外套は彼の生存を感じて笑っていたのだ。まだ愉しめると
「…なんてことだ」
無類は少し呆然としていた。自分が生きていた事に呆然としていたのではなく、降って来た鉄骨が頭に、肩に、地面に当たり跳ねた鉄骨が背中に、腹に、腕に、脚に当たったというのに
「…折れてない」
それどころではない、掠り傷一つ、服にも破れ一つない、痛みすらもない、何かが当たったという感触はあったが、全く持って無傷、相当頑丈に成った
「なんてこった…ッ!」
後に跳べと直感が告げた、黒い外套が移動に攻撃を使った瞬間発生と瞬間移動を合わせた竹唐を振るってきたのだ。
後に跳んで避けた、が
「…跳びすぎだ」
軽く蹴っただけなのだが、約50メートルは離れた。頑丈なだけでなく身体能力も上がっている。本気でやれば300メートルは跳べそうだ。
「よし、第二ラウンド開始だ」
そう外套に向けて呟き、近場に落ちていた鉄パイプを拾いあげる