求愛ラバーズ
想像しただけでも死ぬほど痛いのはわかる。





踏み潰すって………ありえないだろ。





悪魔の様な葛城さんに、男と一緒にいた女が食ってかかったが、悪びれもなく堂々と構える葛城さんにたじろいでいく。





前髪を掻き上げた葛城さんは男の急所をぐりぐりと踏み潰し、気が済んだのか颯爽と去って行った。




女はへたり込み、男は起き上がってこない。





赤の他人がこんなに気の毒だと思ったのは初めてだった。





回りの男は殆んど顔面蒼白と言ってもいいだろう。





俺もそうなっているはず。





誰かが気にかける様子もなく、みんなそそくさと去って行く。





俺も悪友が待つ居酒屋に足を進めた。





今日1日で葛城さんの印象がガラリと変わった。





会社では愛想よく、仕事に真面目でクールかと思いきや実は違っていて、よく話すしよく笑う。





でも、本当は大食いで子供の様な表情をたまにする。





それに、葛城さんは逞しい。





怖いもの知らずなんじゃないかな。





男を蹴り飛ばす女性なんて初めて見た。




< 17 / 97 >

この作品をシェア

pagetop