求愛ラバーズ
「戸高さんいますか?」





定時すぎに聞こえてきた艶ある声。





「ああ、どうした?」


「ちょっと来て。」


「ちょっと抜けるわ。」





チラリと横目で見るが、交わる事のない視線。





ダメだな………どんどん欲張りになってきてる。





最初は見てるだけで充分だった。




一目見れた日は1日仕事が頑張れるほどだった。





それが、秘書課に配属されたお陰で話す事が出来た。





気取ってる様な雰囲気なんて微塵もなくて、気さくだし話やすい人だった。





“お疲れ様です”から始まった会話。





それが今は会うたびに声をかけて来てくれるし、堅苦しさなんかなくて冗談混じりの会話が増えた。




もっと―――――もっと、知りたい。





それと同時にもっと知って欲しいと思う。





PCから視線を移して窓の外を見れば、向かい合い微笑み合う仲睦まじい2人。





つい最近まで俺もあんな感じだったはず。





それを壊したのは俺。





気持ちを理性を欲望を抑えられなかった。




< 60 / 97 >

この作品をシェア

pagetop