求愛ラバーズ
葛城さんの悪口を聞くのは嫌だ。




けど、今はそんな事より戸高さんと帰る姿がショックだった。





チカの言葉を思い出す。





チカと戸高さんは兄弟で葛城さんとは親戚になるらしい。





それを聞いてホッとしたのを覚えてる。





親戚と聞いてなんで安堵なんかしたんだか……。





親戚同士でも結婚は出来るんだ。




噂は嘘なんだってわかってる。





本当に2人が許嫁なら戸高さんは俺にあんな事言わないだろ?





それに、葛城さんだって彼氏なんか作らないはず。





2人はただの親戚――――…。





そう何度も言い効かせても、真実を知らない俺は噂に振り回されてしまう。





こんなに情けない男なんて今まで気付かなかった。





それと、意外と女々しい奴なのかもしれない。





今日だって避けられた事に視線が交わらない事にショックなんか受けないで捕まえれば追いかければよかった。





あの日だってそうだ――。





必死に走って、何が何でもこっち向かせて冷静になって…大好きだと、君しか見えないと言えばよかった。




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