セレーンの祝福
「師匠!早く早く!!」

急かす言葉に眉をひそめて、師匠はだるそうに扉から顔を出した。

家の前には、既にラグス国からの迎えの馬車。

立派な毛並みの馬2頭。

頑丈な造りの荷台。

上品なそれは、誰の目から見ても上等なものだった。

その馬車を持ってきた男は、深々と礼をすると、荷台の中へと私達を招き入れる。

中にはビロードのふかふかなソファが待っていた。

なんて贅沢!

早くも都会の一部分に触れ、どきどきが治まらない。

「カミル、落ち着いて。今からそんななら、着いたら興奮しすぎて死んでしまうよ」

呆れた師匠に背中を押されて中へ入ると、ゆっくりと扉が閉められ、男は荷台の外に座り、手綱を握る。

動き出した車輪と馬の蹄が奏でる音が、心地いい。

「師匠、とうとう出発なんですね」

興奮冷めやらない私に、師匠はあまりハメを外し過ぎないように、と一言。

そのまま腕組みをして、師匠は眠る体勢に入ってしまった。

せっかく小窓から見える景色が綺麗なのに。

そんな呟きも何処吹く風。

ただ、規則正しい揺れがいつの間にか私の身にも眠りを誘うのだった。






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