セレーンの祝福
2.それぞれの始まり
馬の蹄と木製の車輪がまるで音楽を奏でるように耳に響く。
「----------------------…よ」
仰ぎ見たその先に、まだ少しあどけなさが残る少年の横顔があって。
小窓の外を眺めながら、何かを私に語りかけている。
私はただそれを聞いているだけで、何も応えない。
それでも、彼はただ私に語りかけていた。
まるで沈黙を恐れるように。
銀糸がふと揺れて、横顔がこちらを振り返る。
あぁ、思い出した。
これは、師匠だ。
私を引き取ったばかりの師匠だ。
彼は今からは想像もつかない優しい顔で笑った。
そして、憂いを含んだ眼差しで、彼はまた口を開く。
「 」