セレーンの祝福

「師匠、着きましたよ」

体を揺するとそれに応えてゆっくりと目を開く様子は、やはり深い眠りについていたようで。

ただ、朝日に照らされた碧は、はっきりとした光を宿して刺すように景色を眺めた。

その先に広がっていたのは見たこともない大きな建物で、俗に言う「お城」というものだと、頭の片隅に浮かんでは消える。

天を仰ぐと真っ白な壁がどこまでも立ちはだかるように視界を塞ぎ、ただ、こちらを圧倒する。

細かな細工の窓飾りやステンドグラス。

夢見たままの、正に「お城」だった。

周囲に茂る木々とひっそりと湧き出ている泉は、この国の豊かさを示していて、噂に聞き及んだ通り、素晴らしい国なのだと頷ける。

城の頂に近い壁側面には、女神の像が国を見渡すように彫り込まれていた。

あれが、この国の女神、セレーンなのだろう。

言葉を失った私を促すように、師匠の手のひらが私の手を引く。

師匠はいつもよりも強張った表情で、少し冷たい目をしていた。

「ほら、来ただろう。歓迎する、エオル」

豪奢な造りの橋の向こう、重厚な扉の奥から現れたのは、あのイサだった。

その声は喜びを隠さず浮いた声音で響き渡り、師匠の眉間の皺を深くさせる。

少年は、師匠にとって不機嫌の元である以外の何物でもないらしい。
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