セレーンの祝福
出迎えてくれた何者にも挨拶すらせず、ただ仏頂面な師匠。

焦った私は代わりに軽い会釈で挨拶を済ませたものの…。

イサの背後に控える数人の部下らしき屈強な男達はそんなことには気にも止めず、ただ周りを警戒している様子だった。

特に挨拶は不要らしい。

御者が恭しく礼をすると、イサは慣れた手つきで下がるよう指示を出している。

少年らしくもなく威厳のある様子で、御者は恐縮しながら馬車に乗り込み、その場を後にした。

ありがとうも言えないまま、私はその姿を見送った。

「カミルもよく来たね。後で城内を案内させよう。好きなところを見て回るといい」

「えっ…い…いいんですか!?」

イサが続けて、手配を、と後ろにいる男へ伝えると、一礼をしたその男は城に消えていく。

何だか凄い事になってきた。

そもそも、師匠はこんなお城に入れるような人だったということが驚きだった。

「イサさんって一体…」

「ラグス国の第一王子だよ」

知らなかったのか?とばかりに手軽な感じで師匠は言う。

「えぇぇぇええええええーーーーーー!?」


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