セレーンの祝福
「あ…えと…ありがとうございます…」
私を部屋に押し込めると、彼女は静かに、でも威圧感たっぷりに扉を閉めた。
「何でこんなに嫌われてるのかな~…」
彼女はイサの乳母だという。
会った時、こちらを見定めるような目で見て、そう自分を紹介した。
息子をとられた母親の気分…なのかな?
そう結論づけて、ふかふかの天蓋付きベッドへ横たわると、長旅の疲れが重く体にのしかかる。
あれだけ馬車で寝ていたのに、まだ眠気が襲うなんて…。
「結局、師匠に引き取られた時のこと、聞けなかったなぁ」
師匠、今頃何してるかな……
案内とは名ばかりの厄介払い。
師匠は別室に消えていった。
一際豪華な大きな扉の奥に……・・・。
「エオル。久しいな。面を上げよ」
顔を上げた先には玉座に着いた初老の男性の姿があった。
最後に見た時よりも皺が増え衰えを感じるものの、纏うオーラはあの頃と変わらず、「統治するもの」、その威厳を保ったままだった。