セレーンの祝福
「お久しぶりです。王」

満足そうに頷くと、彼は玉座を離れ、人払いをした。

衛兵達が立てる仰々しい鎧の音が扉の向こうへ遠ざかっていく。

ただ一人を残して。

「イサ、お前もだ」

視界の端で、少年は苦々しく顔を伏せた。

ためらいつつも、ひとつのため息を残して彼もまた扉の向こうへ消えたのだった。

「いいのですか、ご子息はご不満そうでしたが」

「よい。あれにはこれ位で丁度いいのだ」

そうは思えない様子だったが、とは言えず、そのまま口をつぐんだ。

「そなたを呼び寄せたのは、他でもない。統治して10年。平和を保ってきたが、水面下でやはりあの大戦の火は燻っていた。そなたの腕を見込んでのこと。その火を鎮めてはくれまいか」

王は重く低く、言葉を紡ぐ。

誰もいないこの謁見の間に静かに響いては、届く先を見失ったように消えて行く。

応える様子のないエオルの表情を伺うと、彼は頭を振り、ため息を落とした。

「相変わらずだな。愚息の話からてっきりそなたは迷わずこの話を受けてくれるものと思っていたが」

確かに。
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