セレーンの祝福
何ら変わっていない、父の中では。
いつもは気持ちのいいこの庭園も今は輝きを失っているかのようだった。
「くそっ…」
噴水の淵に腰を下ろすと、身につけた鎧が歪んだ音を立てる。
ただの飾りのようで、それが更にイラつかせた。
『大戦の残り火を鎮めよ』
それが彼への伝言。
自分だって、この国を護るために尽力できるはずなのに。
自分は只の飾りなのだといつも思い知らされる。
深いため息は水音に吸い込まれていった。
「あの…イサ王子…?」
声の主は振り返らずとも知れた。
「何かあったんですか?」
琥珀色の目をくりくりとさせて、彼女はこちらを伺っていた。
揺れる髪が夕日に透けて、不思議な色合いを放っている。