あたしとリュウイチ
『ねえ、ママ。今週中に塾の夏期講習の申込しないといけないんだけど・・・』
その夜あたしは家に帰って
ママの機嫌が良さそうな時間帯を
見計らってから、そう切りだした。
『夏期講習なんて・・・英修に行ってれば必要なかったのに・・・』
この手の文句はもう聞き慣れている。
あたしは何も反論せず
塾からもらった案内を手渡した。
『高いわねえ・・・。あら、合宿もあるの・・・』
夏期講習終盤には3泊4日の合宿も含まれていた。
もちろん希望しなければ不参加でもかまわない。
あたしは、ママが反対しないことをこっそり願っていた。
『夜はレクリエーションの時間もあるみたいだけど、こんなの本当に必要なのかしら・・・』
『みんなで一緒に頑張るから連帯感を高めるとかって塾の先生が言ってた』
あたしは塾で聞いたままの言葉をそっくりママに伝えた。
『マミ、あなたはそんなの参加しなくてもいいから。その分一人で勉強してなさい。費用の振込みは明日にでもやっておくわ』
ママはそれだけ言うと
もうあたしのことから興味を失ったようで
さっさと案内を自分のバッグにしまって
自分が経営している
料理教室の資料に目を通しはじめた。