あたしとリュウイチ


気が重いまま



真光塾初授業の日を迎えた。





お兄ちゃんやお姉ちゃんは



遠い塾や予備校に通うときは



ママが車で送迎してたりしたけど



英修の2度目の受験に落ちた頃から



あたしの移動手段は全て



黄色いマイ自転車だけになっていた。





それでもこの季節は



学校が終わって一旦家に戻ってから



自転車をゆっくり走らせてると



とても気持ちがよかった。





日が落ちかけた時間の少し冷たい春風が



あたしの頬を優しくなでながら



通りすぎていく。






家族のことからも



勉強のことからも



遠く離れていくような気持ちで



何も考えずにペダルをこぐ時間が



あたしは好きだった。
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