君に染まる(後編)
○5章

好きだから…




「で?何回したの?」



ワザとらしいほどにやにや笑う楓ちゃんに、
何度もされた質問とはいえ箸が止まる。



「…し、知らないって!」



「知らないって何よ。自分のことでしょ?」



自分で作ってきたという大きなおにぎりを片手にあたしの前の席に座り、
あたしの机に頬杖をついて顔をしかめる。



「土曜の夕方から日曜の夕方まで丸1日一緒にいて、相手は獅堂先輩。
そんなのヤり放題に決まっ―――」



「ちょ、ちょっと!」



思わず立ち上がり、慌てて楓ちゃんの口を塞ぐ。



さっきから危なっかしい言葉を連発する楓ちゃんの興味の先はもちろんあたしの初体験のこと。



あれから結局創吾先輩の家に泊めてもらったあたしは、確かに丸1日一緒にいた。



けど、全ての時間をベッドで過ごしてたわけじゃない。



あの後流されてもう1回しちゃったけど…
それで終わりだった。



なんとなくそんな雰囲気になったりしても、抱きしめられて、キスをされて…
ただそれだけ。



一般的にいう家デートのように、ごくごく普通に過ごしただけ。



…あえて質問に答えるとしたら、2回…ですね。





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