君に染まる(後編)
「ふはっ」
お互い身動きせずいた数秒間の沈黙の中、先輩のふきだした声が部屋に響いた。
先輩へ視線を向けると、にやにやしながら私を見つめている。
もしかして…。
先輩の様子から嫌な想像をしてしまい、カーッと体が熱くなる。
そんな私を見てもう一度ふきだすと、再び私を抱き寄せた。
「どうした未央?顔真っ赤だぞ」
「か、から、からかったんですか…」
「んー?なんのことだかさっぱり」
くすくすと笑う先輩に更に体が熱くなる。
「悪かったって、そんな泣きそうな顔すんなよ」
口では謝罪の言葉を告げるが、その態度はまるで反省していない。
「つか、からかいたくなって当然だろ。せっかく…」
「………先輩?」
突然黙りこんでしまった先輩を見つめる。
やっぱり様子がおかしい…お兄ちゃんと話した時に何かあったのかもしれない…。
今度こそは聞こうと「あの…」と、少し背伸びぎみになった瞬間。
唇が重なり、先輩は腕の力を強めた。