君に染まる(後編)
重なるだけのキスが終わると、先輩はそのまま私を抱きしめた。
「…今夜は、一緒にいて欲しい」
珍しく、絞り出すような弱弱しい声。
ぎゅっと私を包みこむ体が震えているんじゃないかと思うほど目の前の先輩は何かに怯えているように見える。
まるで…私が消えるのを怯えているかのようだった。
必死に私を抱きしめる腕の力は弱まる気配はなく、先輩は私の返事をじっと待っている。
聞きたいことはある。
だけど、今は…先輩が限りなく愛おしい。
理由は分からないけれど…そんなのはまた明日の朝にでも聞けばいい。
今じゃなくても…いい。
今はただ、先輩の想いを受けとめよう…。
何も言わず、少し丸まった背中に手を回した。
それを合図に腕の力は緩み、視線が絡まると同時に再び唇が重なった。