君に染まる(後編)
矛盾と恐怖〓創吾side
2月上旬。
VIPルームと呼ばれる建物のベッドルームで、いつものように熟睡していた俺は上機嫌な鼻歌で目を覚ました。
「…っるせぇ」
せっかくの快眠を邪魔され寝起きは最悪。
そんな俺とはうらはらに鼻歌の主は軽すぎる声を返す。
「あ、創吾くんおはよー」
「卓…お前うるせぇよ……」
少し寝癖のついた髪をかきながら窓際に座る卓を睨んだ。
「だってもうすぐバレンタインでしょ?楽しみでつい、ね」
「分かるでしょ?」とでも言いたそうに同意を求めてくる卓に首をかしげる。
「………は?」
「だーかーらー、バレンタイン!創吾くんは楽しみじゃないの?」
「楽しみなわけねぇだろ。バレンタインなんて大嫌いだっつーの」
「え?なんで?」
「うぜぇんだよ。甘いもの嫌いなのに無理やり押し付けられた上、1ヶ月後にはホワイトデー…なんで嫌々もらったもんにお返しなんてしなきゃなんねぇんだよ」