君に染まる(後編)
女に不自由したことはない。
それを自覚し認めていても嬉しいと思ったことはないし、別に嫌だと思う必要もない。
けれど、こういうイベントでは厄介なものに他ならない。
俺に限らず、世のモテすぎる男達は皆そう思っていることだろう。
家族、あるいはいたずらで同性からしかもらえないような男からすれば贅沢すぎる悩みだとは思う。
しかし、本人達にとっては死活問題だ。
本当に死活問題だ。
食べきれないチョコの山。
失礼だと分かっていても、おすそ分けせざるをえない。
喜ばれればそれで良し。
嫌味な奴だと思われたところで、そんなことはどうでもいい。
1人で食べれば間違いなく三途の川を見ることになる。
はなから食べるなんて選択肢はなく、チョコの対処を全て畠山にまかせている俺にとってそこのところは特に問題じゃない。
けど、チョコを渡してくる女達の熱気やうっとうしさは俺のイライラを高潮させ、最終的には体力を削っていく。
「まあ、創吾くんの気持ちも分からないでもないよ?毎年毎年お疲れ様だよね、でも………お返しなんてしたことないじゃん」
「あ?なんつった?」