君に染まる(後編)
そう感じた瞬間。
未央の頬に触れていた俺の手に、未央が手を重ねてきた。
そのまま、ゆっくりと指の間に指を絡め力なくも愛おしそうにぎゅっと握った。
いままで、苦しくて無我夢中に助けを求めるようにすがりついてきたことはあっても、こんな余裕のある感じで自分から俺に触れてきたことはない。
「…未央?」
思わず唇を離し辛そうに顔を歪める未央を見つめる。
「…は、い?」
「いや、手…」
すっかり火照った様子の未央は肩を上下させながら呼吸を整える。
「…手が…どうかしましたか?」
「どうかって…こっちが聞きてぇよ。なんか変だぞ今日の未央。やけに積極的だしすんなり流されるし」
俺の言葉に未央は困ったように顔を歪めた。
「…そんなに、おかしいですか?」
「え?」
「そんなに、私が…」
そのまま黙り込んでしまったので、察して「美紅にまたなんか言われたか?」と聞くと、ハッとして顔を振った。
「言い出したのは私なんです。美紅先輩は相談にのってくれただけで…」
「相談?」
「あ…その…」
言葉に詰まった未央を急かさず大人しく待った。
未央が重ねる手の親指を少し動かし頬をさする。