君に染まる(後編)


「違うんです!イブの日、先輩がおかしかったから、今日ぐらい頑張って受け止めてあげたいって思って…そう思っただけで…でも、そう思ってみると、なんだかすごく気持ちが楽で…いつもは見られたり触られたりすると、恥ずかしくて、緊張して、そういう気持ちの方が大きいんですけど…」



途端、手で顔を覆った未央は顔を見られたくないとうつむき、少しくぐもってしまった声で続けた。




「イブの日以来、見られたり触られたりすると、その…嬉しくて…幸せで…もっと、もっと…って思っちゃって…先輩のこと元気づけたいって思ったのはホントです…でも、だんだん先輩のことを口実に自分の気持ちよさを優先させてるような気がしてきて…」

「は?」



首をかしげる。


未央の言ってる意味がよく分からない。




「悪い、ちょっと意味が…えっと…気持ちよさ、って?」

「ごめんなさい…変態だと思わないでください…」



あまりにも弱弱しい声でそんなことを言い出すものだからぎょっとして言葉に詰まる。


未央は続けた。



「美紅先輩と話したことでなんだか拍車が掛かったみたいで…先輩のことだから、私がそういうことをしたらきっとすごく喜んでくれるんじゃないかって思って…自分でも分かってました…そんな風に思っちゃうなんて自惚れもいいとこだって…でも、そう思っても先輩といると我慢できなくて…」



…やっぱり、今日はひどく煽られてる気がする。




「おかしいなって思いはじめたのはここ最近なんです…我慢の限界が…その…まるで………私………欲求不満みたいで…」


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