君に染まる(後編)
未央の頬に触れ、髪に触れ。
そのたびピクピクと反応するのが次第におもしろくなってきた。
「最近様子がおかしかったのは、イブの日からずっとそのことを気にしてたからか?」
頬を指でつつきながら顔を覗き込む。
「イブの日からずっと…俺のことばっかり考えてたとか」
頬から唇へ指を動かし期待を込めた視線を送る。
軽く唇を結んだ未央は何も言わず困ったように眉を下げた。
「…そんな顔すんなよ。違うなら違うでいい」
別に困らせたいわけじゃない。
ただ、今なら素直に教えてくれるんじゃないか、と欲が出ただけだ。
いつもの未央と違いすぎて思ってる以上に動揺していたのかもしれない。
十分気持ちを見せてくれたんだからいいじゃないかと言い聞かせもう1度キスをしようと顔を近づけたその時。
唇を触る俺の手に未央がそっと触れた。
「あの…私、様子おかしかったですか?」
「え、あ、ああ…この前ここでピアノ弾いてた日とか…その日の帰り道なんか特に」
「ピアノ…ああ、あの日は、その…チョコのことで悩んでて…でも、悩む必要なかったみたいですね…」
苦笑いを浮かべた未央がチラッと視線を向けた先を追うと、入り口のとこに優のものと一緒にまとめてある大量のバレンタインチョコが目に入る。