君に染まる(後編)
唇が重なる瞬間、慌てて顔をそらす。
「未―――」
「あ、あたし、飲み物買ってきます!」
「は?あ、ちょ…」
顔をしかめる先輩に背を向け、
ベッドルームを飛び出した。
それで…どうしよう?
一応買ってきた飲み物を握りしめ、
VIPルームの前で考え込む。
戻ったって話す勇気ないし…
きっといつもの雰囲気に
なっちゃうんだろうし…。
うーん…と、扉の前でうなっていると、
足元に何かふわふわしたものを感じた。
「みゃあー」
視線を下げると、
キレイな毛並みをした子猫が
足にすり寄っている。
あ…裏庭の猫かな?
人懐っこくじゃれてくる子猫を
優しく撫でてやると、
どこからかもう1匹やってきた。
「みー」
「みゃっみゃっ」
2匹の子猫はお互いに鳴き合い、
裏庭の方へ駆けていく。