君に染まる(後編)
小さく笑い、頬をつまんでいた手を離したその時。
「それって…普段、私が先輩のことを想って行動してないってことですか…?」
震えた声で突然そんなことを言われ、驚きの声をあげることもできなかった。
「あ…ごめんなさい、その…確かに行動はできてないです…すみません……」
質問口調だったにもかかわらず、俺の答えを待たず「でも…」と未央は続けた。
「バレンタインとか関係なく…私いつも先輩のこと、お、想っ…て…ます…」
どんどん小さくなる声につられるように真っ赤に染まっていく顔。
歓喜すると同時にこみあげてきたのは…苛立ちだった。
なんだよ…その、まるで…私は先輩のことが大好きです、とでも思ってそうな顔つき。
「…想ってるって言ったって、俺と未央じゃ度合いが違うと思うけどな」
予想外の返事だったのか目を見開く未央に更に言い放つ。
「俺はどんな時でも未央のことばっか考えて、会いたいって思ってる。俺の頭ん中は未央一色だ。でも…未央は違うだろ?」
止まらない。
こんなこと言いたくないと思いながらも止められない。