君に染まる(後編)
「…怖いんだ」
ボソッと呟いた俺の言葉に腕の力が少しゆるんだ。
「アニキと話したこと聞いたら…未央は、俺と別れるって言い出すかもしれなくて…それが……怖い…」
「…え?」
未央の声は明らかに動揺していた。
けど俺は、そんな未央をフォローする余裕なんてなくて、ただこのまま未央に抱きしめられていたいと、そればかりで。
未央に体を預け、肩に触れていた未央の手を強く握りしめた。
「………大丈夫、ですよ」
まだ少し動揺の残る声と同時にまたぎゅっと抱きしめられる。
「…私は、ここにいます」
その言葉が。
「……っ…」
その言葉が、あまりにも嬉しくて、思わず泣きそうになってしまった。
必死に涙をこらえ、そんな自分に気付かれないよう俺も同じように未央を抱きしめる。
細い腰に腕を絡め、より密着すると未央の香りに包まれた。
落ち着く…優しい香りだ。