君に染まる(後編)
○6章
違和感
今日で三学期が終わり、明日から春休み。
修了式を終えた私と楓ちゃんはVIPルームへ向かった。
創吾先輩、美紅先輩、卓先輩、優先輩がいて、それぞれがいつも通りくつろいでいる。
いつもと何も変わらない光景。
だけど、ただ1つ違う…私と創吾先輩の距離。
「未央」
VIPルームの扉を開けてすぐ、ソファーに寝転がっていた創吾先輩が私の顔を見て嬉しそうに起き上がった。
私はそれに笑顔を返し、創吾先輩の横に座る。
「…やっぱ変な感じ。仲良さそうなその空気」
ボソッと聞こえてきた声に振り返ると、階段に座ってこちらを見ている優先輩と目があった。
「ちょっと、やっと恋人らしくなった2人にちょっかい出すのやめてよ優。こじれた時八つ当たりされるの嫌なんだから」
「そうだよ優くん。とばっちりくらっちゃうよ?」
兄弟そろって好き勝手なことを言う中、創吾先輩は「何か飲むか?」「これ美味いぞ」と私の相手をするのに夢中で2人の声は耳に届いていないようだ。
そんな創吾先輩に美紅先輩も卓先輩も優先輩と同じように不思議そうに首をかしげた。