君に染まる(後編)
ベッドルームに入ると、創吾先輩は仰向けでベッドに寝転がっていた。
「あの、創吾先輩…」
呼びかけてもぴくりとも動かない。
近付いて顔を覗き込むと目元に当てていた腕を少しずらし目を開いた。
けど、目が合うとまたすぐ目を閉じて背を向けるように寝返りをうった。
機嫌、悪そう…。
「あの…さっきのは気にしないでください。美紅先輩はただ創吾先輩をからかっただけで私のことをそういう対象として見てる人なんてあのクラスには―――」
「行くな」
言葉を遮ったのはあまりにもきつい言い方だった。
ものすごく怒っているような。
驚いて固まってしまった私に、体を起こした先輩が視線を合わせ念を押すようにもう一度言う。
「その同窓会、絶対に行くな」
「…………どうしてですか?」
「逆に、なんで分かるんだよ。そのクラスに未央をそういう対象として見る奴はいないって」
「い、いませんよ。私、今まで告白されたことないですし、男の子と二人きりで話したことがあるのは植野先輩ぐらいで…」
「よく分かった。もう一回言う。同窓会には行くな」
まるで私の言い分なんて最初から聞く気がないと言った感じだ。