君に染まる(後編)
電車に乗って同窓会が開かれるお店へ向かう。
20分ほどで最寄りの駅へ着いた。
「未央?」
改札を出てすぐ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「優先輩」
確認する前に楓ちゃんが口を開く。
「楓も一緒…どこか行くの?」
「優先輩こそどうしたんですか?先輩がこんなに人の多いとこにいるなんて珍しいですね」
「ちょっと頼まれごと。…ねえ未央、創吾と何かあった?」
「…どうしてですか?」
「終業式の日から創吾の様子がおかしいんだよね」
…創吾先輩は、優先輩に何も話していないのだろうか。
どう答えようか口ごもっていると楓ちゃんが助け船を出してくれた。
「すみません、私たち今から用事があるので。詳しいことは美紅先輩に聞いてください」
「美紅?」
「あ、あと私たちにあったこと獅堂先輩に言わないでくださいね。約束ですよ、芹澤先輩」
腑に落ちないといった表情の優先輩に手を振りながら私の手を引いて歩き出す。
「ありがと、楓ちゃん」
数度優先輩を振り返る私に楓ちゃんはニッと笑った。