君に染まる(後編)


「…ひ、久しぶり、百瀬」



正面に座っていた男の子に唐突に声をかけられた。


「あ…久しぶり、高杉くん」


さっきから目が合っていたのに改めてあいさつをされたことを不思議に思いながらもあいさつを返す。

じっと見つめてくる高杉くんに「どうかしたの?」と首をかしげる。


「あ…いや…なんか雰囲気変わったな、って思って…」

「そう、かな…?」

「1年ぶりだからかもな…百瀬、集まりとか全然こねぇし」


「そーだよね!」


高杉くんの隣に座っていた女の子が会話に入ってくる。


「楓はバイト忙しいって聞いてたから分かるんだけどさー未央ちゃんはバイトやってないし、ピアノ教室も毎日あるわけじゃないし、頭いいって言っても休日まで勉強してるわけじゃないでしょ?なんでこれなかったのー?」

「えっと…」

「やっぱ楓がいないと不安?2人昔からずっと一緒だし」

「そんなことないよ。中学の時の集まりは、楓ちゃんいなくても行ったことあるし」

「あ、そういえばそっか。んー…あ!じゃあアレだ!彼氏だ!」

「え…」


図星をつかれ固まる。





女の子の勢いにおされ隣で黙り込んでいた高杉くんが私を見て顔をしかめた。


「百瀬?」


恥ずかしくなりうつむいてしまう。

色恋なんてほとんどなかった5組の友達に「彼氏ができました」なんて、そんな簡単な報告がすごく恥ずかしい。


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