君に染まる(後編)
「確かに…普通じゃないかもな…」
やっと目にした先輩の顔には何かを諦めたような表情が浮かび、そして優しく笑った。
「未央には…俺よりそいつの方がお似合いだわ」
「創吾先輩…?」
「普通の家庭で育った…一般人の方が…」
「何、言って…」
先輩が何を言っているのか理解できなかった。
けど、次の言葉を聞きたくない。
それだけは確信できた。
「未央…俺、お前と…」
「っ…!」
泣き出しそうになるのを、痛む腕を強く掴みこらえようとした。
聞きたくない。
耳を塞いでしまいたい。
「お前、と…………っ…」
そこで先輩は口を噤んだ。
そして、そのまま背を向けて歩いて行ってしまった。