君に染まる(後編)
体から一気に力が抜け膝から崩れ落ちる。
「百瀬!」
慌てて私を支えてくれた高杉くんが、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「…とりあえず、みんなのとこに戻らないか?ここじゃ…さ?」
優しく促す高杉くんの手に引かれおぼつかない足取りで再び店の中へと入っていく。
座敷の襖を開けると重い空気が漂っていた。
楽しそう、とは程遠い話し声が消えみんなの心配そうな顔が私に向けられる。
「未央!大丈夫?何かされてない?」
一目散に私の元へ歩み寄ってきた楓ちゃんに力なく笑う。
「大丈夫、だよ…何も―――」
「嘘だ」
私の声を遮り、先輩に掴まれた場所を見せるように高杉くんが裾をめくる。
「これ、アイツがやったんだ。百瀬に…彼女の百瀬にこんなひどいこと…」
高杉くんの怒りこもった声にみんなのざわつきが同調していく。
「…ホントに、大丈夫だから」
めくられた裾を戻し自分の席につく。
「未央、先輩は?帰ったの?」
「うん…たぶん……」
「たぶん、って……」
私の顔を覗き込み何か聞きたそうな楓ちゃんだったけど、口を噤み自分の席に座りなおした。