君に染まる(後編)
それなのになんだこのざまは。
すがってるのは俺の方。
別れを切り出すなんてありえない。
「別れようと」告げれば戸惑いながらも俺が言いだしたことだと諦め「分かりました」と受け入れる未央が目に見える。
それが手に取るように分かってしまうから告げられない。
笑ってしまうほど惨めで哀れだ。
そして、臆病者だ。
よく母さんに「自分のことだけじゃなくて、他人のことも考えられる人になりなさい」と言われた。
恋愛も同じで、自分の幸せだけじゃなく相手の幸せを優先する恋もあるんだと。
1度ぐらいそんな経験してみるのも悪くないと言われたが…俺には絶対に無理だ。
未央が俺と一緒にいて幸せになれないとしても手放すことはできない。
未央を誰にも渡したくない。
未央を…あっちの世界に渡したくない。
俺は俺の幸せしか考えることができない。