君に染まる(後編)


『…優に聞いた。と、言ってもそこまで詳しくは教えてくれなかったんだけど』

「聞いたって…」

『あんたが未央ちゃんのことで真剣に悩んでるって。今までの創吾なら絶対ありえない沈みようだってあの優が心配してたわよ。何らしくないことしてんのよバカ』

「らしくない…」


思わず笑った。

俺自身そう思う。


らしくない、獅堂創吾らしくない。


獅堂創吾はこんな男じゃない。




「なあ美紅…1つ聞いていいか?」

『何よ』

「好きな人がさ、自分といて不幸になるかもしれないって気付いたら…美紅ならどうする?」

『……何それ』

「幸せにする自信はある。けど、そうじゃないんだ。俺が頑張ったって意味がないんだ。その人の気持ちの問題というか…そもそもの自分とその人の立場の問題で―――」
『あんたそんなことで悩んでたの?』



「…は?」

『あんたは、未央ちゃん1人幸せにする自信がないのかって聞いてんの』

「いや、だから自信はあるって今…」

『バカ。大バカ。自信がないからそんなくだらないことで悩むんじゃない。そもそも立場の問題って何よ。生まれてきた環境ってこと?そんなこと気にするような男だったの?』

「だから!俺じゃなくて未央が気にするんだよ!」

『そんなこと気にするような子だと思ってんの!?』


更に美紅の口調は強くなる。


『そんなこと気にするような子があんたと付き合えるわけないじゃない!気にしてたとしても、それでもあんたが好きで側にいてくれるんでしょ?今はそれでいいじゃない』

「そう、かもしれねぇけど…」


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