君に染まる(後編)





駐車場に着くと、畠山は律儀に車の外で待っていた。



「おや、楓様。お久しぶりですね」



何度か顔を合わせたことのある楓に軽くあいさつをすませると眠っている未央のことには一切触れずドアを開ける。



「楓様もお送り致しましょうか?」

「いえ、結構です。2人の邪魔しちゃ悪いですし」


再び意味深な笑みを向けてくる楓から顔をそむける。



「…獅堂先輩」



ため息をつき、「なんだよ…」とけだるげに顔を向けると楓は真面目な顔をして俺を見つめていた。



「今日のこと、高杉ほどじゃなくても私だって怒ってますからね」


ついさっきの雰囲気とはまるで違う。

楓が怒ってる。

それを感じる。




「…けしかけたのは私と美紅先輩ですし、そのことについては反省してます。けど、だからってそれだけでここまで大事になったとは思えません。何があったかも知りませんし、2人のことにとやかく言うつもりありません。けど…創吾先輩の彼女の前に、未央は私の親友です。先輩と一緒にいることで未央が傷つくのなら別れて欲しいって、そう思っちゃいますよ」

「…………ああ」


言い返す言葉もなく素直に相槌を打つ俺に「でも…」と続ける。


「私知ってますから。未央が先輩のこと大好きだって。だから…2人のこと応援したいから、『別れて欲しい』なんて考えさせないでください」



楓は、怒ってるような悲しんでるようなそんな表情を浮かべていた。



俺はただもう1度「……ああ」と、答えることしかできなかった。


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