君に染まる(後編)
未央を抱え自室へと足を進める。
使用人はもうみんな休んだようで、少しの明かりしかついていない屋敷は静まりかえっている。
いくら未央が軽いとはいえ、酔いつぶれて眠っている人間を抱えて歩くのは少し疲れてきた。
ようやく部屋の前にたどり着き、体でドアを押し開けた瞬間。
「うお!!?」
足が絡まり体制を崩した。
そのまま倒れそうになり慌てて未央をかばうように体を反転させる。
「っ!!!……ってぇ……」
背中から勢いよく倒れこんだ衝撃ですぐに起き上がれずしばらく痛みに耐えた。
「あー……っ…」
なんとか起き上がろうと体に力を入れると、抱えていた未央がピクッと動いた。
そのままのそのそと起き上がる未央に慌てて声をかける。
「大丈夫か?未央。どっか打ってないか?痛いとことかないか?」
かばったとはいえとっさのことだったし、ずいぶん派手に倒れこんだ。
頭、肩、腕、足。
特に手は入念に確かめてうつむく未央の顔をのぞきこむ。
意識がはっきりしていないのか、どこかふわふわした感じで揺れている。
「未央…大丈夫、か?」
もう1度声をかけるとゆっくりと顔をあげた未央と目が合った。
とろんとした瞳で俺を見つめる未央は酔ってるせいか少し色っぽい。