君に染まる(後編)


良かった…もうすでに別れ話が出ていたわけじゃなさそう…。



ホッと胸をなでおろす私に先輩が少し怒ったように声をかける。



「未央。どうしたんだよ」


緊張が走り、勢いよく振り返る。



「その…先輩から連絡がきてたらどうしようかと、思って……」

「連絡?何をだよ」

「何って……昨日の……」

「昨日?」

「だから!昨日先輩が言いかけた…っ」


思わず涙が溢れた。


やだ…泣きたくなんかないのに…。




正直、言葉にしたくない。

「別れる」という話題を出したくない。



先輩に「別れよう」なんて言われたら「嫌です」なんて言えない。

「別れたくないです」なんて…そんな風に私はすがれない。



たとえ先輩が好きで好きでたまらなくて、もう先輩無しでは生きていけないほどだったとしても。

泣いて、すがって、懇願して…そんな風にぐちゃぐちゃになれるほど私は自分の気持ちに素直になれない。


みっともないと思ってしまうから。

めんどくさい奴だと思われたくないから。


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