君に染まる(後編)
だから、泣きたくなんかなかったのに。
抑えようと思えば思うほどぽろぽろとこぼれ落ちる涙をどうしようもできなかった。
同時に、自覚せざるを得ない。
どれだけ頭で平静を装おうとしても心はとても素直だった。
―――先輩と別れたくない。
言葉にはできなくても、止まらないこの涙が立派な証拠だ。
気が付けばベッドに座っていた先輩は私の目の前にいた。
「…なんで泣いてんだよ」
声を出したくても言葉にならない。
溢れ続ける涙を先輩も一緒になって拭いてくれる。
「なあ、教えてくれよ。なんで泣いてんだ」
先輩のおでこが私のおでことくっつく。
なんだか先輩も、今にも泣きそうな顔をしている気がする。
けれど、どこか嬉しそうにも見えるのはどうしてだろう。