君に染まる(後編)


「やめろ未央…」



私の言葉を黙って聞いていた先輩が腕の力をゆるめた。



それでも先輩にぎゅっと抱きついて離れない。



「好き…っ…好き、です……」


泣きじゃくる私に先輩がチッと舌打ちを打った。


勢いよく体を引き離された、と同時にかぶりつくようにキスをされる。


唇ごと食らいつくようなキスに思わず逃げ腰になる私を見透かしたように引き寄せ、簡単に抱き上げた。


そのままベッドに連れて行かれ、あっという間に先輩に押し倒される体制へ。




「……あんま煽るな」



苦しそうな表情を浮かべる先輩は深く大きなため息をついた。


「でも、好きです…」

「…っ…っだから!あんまそーいうこと………あーもうっ!」



ガバッと起き上がった先輩は片手で頭を抱えた。




「…好き、とか……そんな簡単に…そんな……いっぱい……」



ボソボソと呟く声がよく聞こえなくて私も体を起こした。



「…先輩?大丈夫、ですか?」

「大丈夫なわけねぇだろ!……大丈夫じゃ…ねぇよ…」


苦しそうに息をする先輩に触れようと手を伸ばすと、それに気付いた先輩に手をはねのけられた。


「ちょ、やめろ。今触るな」


少しショックだった。


「すみません…」と手をひっこめたけれど、そのままうつむいて黙り込んでしまう。


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