君に染まる(後編)
「……いや、悪い。別に嫌とかじゃないって。ただ今はちょっと…」
そう言いながら、私から少し距離をとる先輩。
「俺からしかけといてこんなこと言うのも変な話だけどな…先に話さなきゃいけないことあるから」
「話さなきゃ、いけないこと…」
一瞬不安がよぎったけれど、さっきの「好き」の言葉と先輩の表情で落ち着いていられる。
「まず、なんだ…何から………ぁ…」
何かに気付いたようにハッとした先輩の顔が曇っていく。
先輩が見つめる先は、私の腕だった。
昨日、先輩に強く掴まれくっきりと手の形が残った腕。
「…痛むか?」
弱弱しい問いかけに首を横に小刻みに振る。
「ホントに?」
「……少し、痛いです」
「なんで嘘つくんだよ。そんなとこで気ぃつかわれると……って、違うか。俺が気ぃつかわせてんだな、ごめん」
一瞬だけいつもの先輩に戻ったと思ったけど、やっぱり弱弱しいままだ。