君に染まる(後編)
「未央さ、昔あの高杉ってやつとなんかあった?」
「え?どうしてですか?」
突然脈略もない話をされ首をかしげる。
「…その反応は単なるあいつの片想いか」
「え?」
「いや、なんでもない」
少し何か考え事をするように黙り込んだ先輩は、小さくうなずいて私を見つめた。
「なあ、俺って…未央に…その……暴力、振るってるか?」
「へ?」
またもや脈略もない話に変な声が出た。
「なんでそんなこと聞くんですか」
「なんでって…なんとなく?」
疑問形で言われてもまったく意味が分からない。
「なんかアレだな…こーいうことわざわざ聞いて納得しようとしてるってホントに普段からDVしてるみたいで嫌だな」
また1人でボソボソと呟いている。
最近の先輩は変だけど、今日はそれに輪をかけて変だ。
「…特に、暴力を振るわれた記憶はありませんけど」
「ホントか」
「はい。イラついた時は、人じゃなく物にあたってますので」
「あ…あー、まあ、確かに……」
なんだか少しショックを受けてるみたいだ。
でも、本当のことだから仕方ない。