君に染まる(後編)
「未央」
少し低いトーンで名前を呼ばれビクッと体を震わせる。
「は、はいっ」
思わず声が上擦ってしまったことなど気にも止まらないのか、それどころではないのか、先輩はトーンを変えず続けた。
「すぐ戻るから、ここで待っててくれるか」
「…どうかしましたか?」
「いいから」
更にトーンは低くなる。
「俺が戻るまで、ここから出るな」
優しい表情とはうらはらに、低い声でそう言い放った先輩は畠山さんと行ってしまった。
5分…10分……。
ベッドに横になったり、携帯をいじったり、時間が経つのをただ待つ。
15分………20分…………。
一向に帰ってくる気配はない。
何があったんだろう。
お仕事の話?何かトラブルがあったとか?
もう30分以上経ってるし…今日のとこは帰った方がいいかも。
【今日は帰ります。落ち着いたら連絡ください】とメールを送り、身支度を整え部屋を出た。