君に染まる(後編)
「…未央、様?」
「っ!」
後ろから声をかけられ思わず声にならない悲鳴をあげた。
「申し訳ありません、驚かせてしまいましたね」
振り返るとメイドさんが不思議そうに私を見下ろしていた。
「どうなさいました?こんなところに座りこんで。体調が優れませんか?」
「あ、いえ…おかまいな―――」
「未央?」
メイドさんが気付いてお辞儀をする。
そのまま立ち去るメイドさんと一緒にこの場を離れたかったけどそうはいかず。
ゆっくり振り返ると先ほどの3人の視線が私に集まっていた。
大人しく部屋で待っていれば良かったと思いながら肩をすぼめてそろそろと階段を降りる。
なぜか表情が曇っている畠山さんに、呆れたような視線を向けてくる創吾先輩。
それと、突き刺さるような痛い視線を向けてくるお客さん。
お客さんに深くお辞儀をして先輩を見やる。
「すみません…なかなか戻ってこなかったから今日は一旦帰ろうと思って…」
「…そうか」
ため息混じりにそう呟くと女の人と私を交互に見て再びため息をつく。
「わ、私、失礼します。大事なお話だったんですよね?お邪魔しました」
もう1度お客さんにお辞儀をして慌てて靴を履こうとした、その瞬間。