君に染まる(後編)
新学期を迎え、2年生になってもVIPルームに通う日々は変わらず、先輩たちもたまり場として利用している。
ただ違うのは、菅咲さんの存在を知らされたこと。
そして、美紅先輩が激怒しているということ。
「別れちゃいな!」
腕と足を組み全身から怒りオーラを漂わせる美紅先輩はかれこれ1時間ぐらいこんな感じ。
1週間前、創吾先輩の家で菅咲さんのことを知り、動揺し、とにかく落ち着きたくて話を聞いて欲しくて楓ちゃんに連絡をした。
そこから卓先輩、美紅先輩…そして優先輩と話はすぐに回った。
先輩達でさえ菅咲さんのことは知らなかったみたい。
「女にだらしなくてもけじめはきちんとつける男だと思ってたのよ。何よりも、未央ちゃんのことは本気だと思ってたからいろいろ協力してやってたのに…アイツ…本当に許せない」
爪をガリガリ噛みながら歯をギシギシいわせている。
「っていうか!なんで連絡取れないのよ!!携帯の電源切ってんじゃないの!?」
怒鳴りつけてやりたい、ぶん殴ってやりたい、と一向におさまらない美紅先輩の怒りに最初こそは一緒に文句を言っていた楓ちゃんと卓先輩は疲れたように顔を見合わす。
「連絡取れなかったわけじゃないでしょ。楓ちゃんから話を聞いてすぐ美紅ちゃんがブチギレながら電話した時に創吾くん察して電源切っちゃったんだと思うよ?」
「なおさら悪いわよ!ヤバいと思って逃げたってことじゃない!家に行っても畠山は取り合ってくれなかったし…っていうかこの状況で1週間も未央ちゃんのことほったらかしにしてるのも腹立つわ!!!なんなのよアイツ!最低なの?最低なのね!!別れなさいよ未央ちゃん!!」
へらっ、と笑うことしかできない私。
だってどうしたらいいか分からない。
創吾先輩は御曹司で、婚約者がいたって何もおかしくない。
むしろ私と付き合ってることが不思議なくらいなんだ。
御曹司の戯れ。
なんだか漫画のタイトルにありそうで少しおかしい。
…戯れならそう言ってくれたら良かったのに。