君に染まる(後編)



「そうよ」


菅咲さんの視線が美紅先輩に向いた。



「創吾は未央ちゃんに夢中なの。あなたなんて1ミリも入る隙なんてないほどにね」

その言葉にまた菅咲さんが笑った。


「それは、ただの恋愛でしょ?」

「何?」


「美紅さん。あなたもご令嬢ならお分かりのはずですわね。将来会社を背負う立場の人間にとって結婚がどういうものなのか」

私と楓ちゃん以外が目を伏せた。


「私は男性としてもビジネス上でも創吾さんを好いてますし尊敬もしてます。けど、それでも創吾さんが未央さまと恋愛がしたいというのなら無理に別れろなんて言いません。古来から有能な男性というものは一夫多妻…私、心得てますから」


優しい声でとんでもない発言をした。


そう思ったのは私と楓ちゃんだけみたいだった。



怒りそうな美紅先輩も菅咲さん一点を見つめるだけで何も言い返さない。




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